読書がもっと好きになる小説おすすめ3選を紹介します!

【文学YouTuberベル】書評を中心に、読書の魅力を配信中の文化系YouTuber。選書×マッチングサービスのコラボでお送りする、本屋が舞台のおすすめ3選です。

 

読書がもっと好きになる、本屋にまつわるオススメ本を3冊、紹介します。
ビブリオ物が好きな方はもちろん、本の魅力ってどこにあるのかな?
もっと本を好きになりたいな。という方にも参考になる、オススメの本を紹介していきます。

1冊目

ベルの大好きな作家さん。
女性を書かせたら右に出るものはいない。
のではないかと思っております。

あらすじ

キャバクラ勤めのシングルマザーから、大穴(ダイアナ)というちょうド級の
キラキラネームを付けられた金髪少女と
父親を編集者に持つお嬢様、彩子のダブルヒロイン。
ガール・ミーツ・ガール小説。
正反対に見える二人ですが、一つの共通点がありました。
それは、「本が好き」なこと。
一緒に図書館に通い、お互いの家に遊びに行ったりして、
文化交流を楽しみ、たちまち大親友に。
進学する中学が、地元の公立と名門私立に分かれても二人の絆は、永遠!
と思われたのですが、すれ違いの重なりによって疎遠になってしまいます。
お互いのいない青春期。読者は、少女たちに降りかかる苦しみの生々しさを、
未熟さに歯痒さを覚えることでしょう。
少女が大人へと成長するとき、二人が再び交わる先に見える物は?
という内容でございます。

現代版、「赤毛のアン」です。
出会いは、小3の時。
ダイアナは、見た目のインパクトが強いため、周りから、
「えー、何その名前。」と言われてしまうですよ。
そこで、
「ダイアナは変な名前じゃないわよ、みかげちゃん。
(中略)赤毛のアンって知ってる?アンの親友はダイアナって言うんだよ。」
すかさず、彩子が言うんです。
気持ちがいいよね!これは、仲良しが約束されている展開でしょ。
本作は、赤毛のアンを下地にして、たくさんの少女文学が出てくるのが特徴です。

<ここからちょっとだけ、赤毛のアンを知っている人向け>
二人のやり取りを見て、ちょっと立場が逆転しているかなと。むしろ
大穴→アン、彩子→ダイアナっぽいなと思いませんでしたか?
そうなんです、本作では、キャラクターと名前が逆転しているのです。
ベルが赤毛のアンで印象に残っているのは、
アンが訪問販売員に買わされた物で髪を染めたら緑色になっちゃった。と言う事件と
アンがダイアナにジュースと間違えてお酒を飲ませちゃったぶどう酒事件。
があるのですが、本作で考えてみますと、髪の毛がプリンになっちゃってるのは、
大穴の方で、大学生になっちゃってからですが、お酒を飲まされるのは、彩子。
と言う具合なんですよ。
赤毛のアンのほか、「若草物語」「秘密の花園」
エッセイで言うなら、「向田邦子」「幸田文」
「ぐりとぐら」のカステラ作り、なんてシーンもあります。
ここら辺に親しみがある人は、縦横微塵に駆け巡る作者の文学愛にワクワクすると思います。
となると、元々知識がないと楽しめないのでは?
知らない人にとっては、冗長に感じるのでは?と思いますよね。
注意点としては、上げることもありますが、この作品は、よく分からなくても
ストレスなく楽しめるところがすごい!
作者に取って今あげたような有名な作品は、知識としてウンチクを垂れるような物ではなくて、
自然に一体化している物だと思うのです。すごく作品に馴染んでいます。

ストーリー展開

友達が欲しいと思った時、自分に持っていないものを持っている人に憧れつつ、
共通の趣味を持っていたら嬉しいな。なんて思いませんか?
それを見事叶えた作品が、本作。
読書好きのベルにとっては、大穴に対しても、彩子に対しても
「あー、こんな友達欲しかったー。」と言う愛着が沸きました。
だが、最後までそんなキラキラ行くわけでもなく、、、
本作では、二人のバイブルになる絵本「秘密の森のダイアナ」が大事な存在になっています。
表紙のイラストも「秘密の森のダイアナ」をイメージしたものになっています。
主人公が悪い魔女からかけられた呪いを破るシーンが印象的。
これが何を表しているかというと、二人が少女から大人へと変わっていく過程で
女性にかけられる呪い、つまり、社会的抑圧の暗示です。
人の外見や職業で判断する世の中、女性に対してのハラスメントを軽視する世の中。
離れ離れになってしまった少女たちは、そういった暴力や理不尽に
一人で直面しなくてはなりません。
この呪いの厄介なところは、幼い頃からずっといつの間にかかけられているもの。
誰が解くことができるのかといったら、自分しかいない。
ベルが好きなところは、彼女たちはさまざまな事情に振り回されつつも、
かすかな連帯を信じて、自分の意志で自分を取り戻すところですね。
ここに守られる、かばわられる、自立した女性像を感じられました。
呪いをかけられる謂れもないし、それを自分で解かないといけない、
ってめちゃくちゃ無駄だし、面倒臭い。そもそもする必要がないこと?!
しかし、現状はこうだよねーという作者のメッセージを感じられました。

で、本屋さんの要素は?!

ところで、冒頭に言った、本屋の要素はどこにあったんでしょう?
大穴の幼い頃からの夢が、本屋さんで働くことだったのです。
実際に物語の中に本屋さんが出てくるのは、後半になってきます。
ここで書店員のお仕事小説的な雰囲気を楽しみつつ、作中、常に謎をまとっていた
母の過去も徐々にわかってきまして、更に謎である父の正体、
これが明らかになるラストの大舞台として書店が選ばれています。
10何年の時が、二人の交互の視点で書かれていまして、
ハラハラ、ドキドキ、最後まであっという間でした。
特に少女文学が好きだったかつての少女たちに読んでいただきたいです。

相性の良い本は…

これも二人の女性の話なんですけれども、年齢が上がりまして、アラサー。
直木賞候補。柚木ワールド全開なので最初は、「本屋さんのダイアナ」がおすすめです。
こちらが気に入ったら、是非、手に取ってみてください。

2冊目

アメリカの作家さんの作品。
2016年本屋大賞「翻訳小説部門」受賞作品。
ニューヨーク・タイムズのベストセラーリストに4カ月にわたってランクインし、
30以上の言語に翻訳され、世界中で愛されている作品です。

あらすじ

主人公は、A.J.フィクリー。島で唯一の小さな書店を夫婦で営んでいたのですが、
妻が事故で亡くなってしまってからというもの、偏屈な性格になっていました。
最初、どこの偏屈ジジイかよ?!って思ったけど、まさかの39歳で、びっくり。
それくらいの?!ひねくれ加減です。
ある日のこと、彼の唯一の財産と言っても過言ではないエドガー・アラン・ポーの稀覯本(レア本)が、盗まれてしまうんです。更にその数日後、店内に2歳半の女児、マヤが置き去りにされる事件が発生。
のちに、マヤの母親は入水自殺したことが分かります。
そこでフィクリーがどうしたかと言う言いますと、意外や意外、マヤに愛着が湧き、育てることを決意するのです。
それからと言うもの、なにかと気にかけてくれる島の人々のバックアップもあって、書店は、ご婦人の憩いの場に。あまり読書をしなかった警察官が自分で読書会を主催するまでになります。
マヤも本に囲まれてスクスクと育ちます。
しかしこれは、フィクリーの成長物語です。
ただのひねくれ者からツンデレになって、愛と幸せを確かめながら悲劇を乗り越えていく。
しかし、ポーの稀覯本とはどこへ行ってしまったのでしょうか。
マヤの母親はなぜ島で最後を迎えようと思ったのでしょうか。
ミステリー要素が漂いつつ、本が人と人とを繋ぐ感動の一作でした。

舞台は、、、

本屋さんということで、読書愛がたっぷり詰まった作品でした。
そして小タイトル。
「善人はなかなかいない」
「バナナフィッシュ日和」
「告げ口心臓」
などなど、実在する短編集のタイトルが当てられています。
新章が始まる前にフィクリーがその短編にまつわるメッセージをマヤ宛にしたものが置かれています。
例えば、、、
「小説というものは、人生のしかるときに出会わなければならないということを示唆している。
覚えておくのだよ、マヤ。」(p.61)
以前は、全く感動しなかった本を時を経て再読したらひどく泣いた。
という経験から出てきた名言。
分かるーと共感。こういう読書哲学的な言葉によって、
本の価値・書店の意義を噛み締めることができました。
また海外の出版事情がわかったのも良かったですね。
日本とは仕組みが違うので、島の小さな書店であっても季節ごとに版元の営業が
書店へ売り込みへ来ます。立場が微妙に違うところもなんだか新鮮でした。
そして、フィクリーの書店にやってくる版元の営業の女性、アメリアもキーパーソンになってきます。

海外文学は、読みづらい?

作品自体、決して難しい言葉を使っているわけでもなく、会話も多いのですが、
やはり独特の入りにくさはありました。
翻訳本に慣れていない方は、慣れるのに少し時間がかかるかもしれないです。
読みづらい点としては、海外文学の素養があまりなかったこともあると思います。
というのも、こちらの中に出てくる作品はほぼ読んだことがなかったのですし、
全部が翻訳されてはいないかも知れませんが。
でもファンタジーを楽しむ気持ちで読めます。
ファンタジー読みしても面白いことは、間違いないです。
著者の豊富な文学知識がちりばめられていることは容易に想像できるのですが、
拾いきれなかったもどかしさはありました。

インスタで質問、頂きました。「途中で挫折しました。この本の魅力を教えて!」

流し読みでも構わないので、とにかく80ページまでは頑張って読んでみて。
そこから一気に気持ちが乗ってきました。
マヤとフィクリーの歩む道を見届けたいが為に引き込まれていきます。
著者は脚本家でもあるので、展開は上手です。物語の展開が逸品です。
個人的には、会話にユーモアが溢れているところも楽しくて大好きです。
いくつかの悲劇は経験するし、色々と因果は巡っているのですが、
大人の事情は大人で処理し、マヤへの愛情は100%、みんなが注いでいくところが素敵でした。

イチオシキャラは

警官のランビアーズ。
彼は友人想いで素直で。元々、読書に親しみのあるタイプでもなかったのですが、
フィクリーのおすすめによってどんどんと引き込まれていきます。
しかし周りには流されず堂々と自分は、ヤングアダルトと犯罪小説が好きなんだ。
と言っているところもかっこいい!
この方は、物語の締めにもクールに携わってきますので、要チェックです。
年齢も人種も性別もバラバラの魅力的なキャラクターたちが多い作品でした。
フィクリーはインド系アメリカ人で、マヤは黒人の女の子なんです。
本は、年齢・性別・人種・宗教を超えて人々を繋ぎ幸せをもたらすものなのだと
著者は伝えたかったんじゃないかなと思います。
人種、宗教の観点というのは、海外文学だからこそ感じられるものですよね。

相性の良い本は

ベルは未読なのですが、作中でも出てきて解説でもお薦めされていました。
他にも色々な短編が紹介されていました。短編なのでさらっと読めるかも知れない。
という興味は湧きましたね。

3冊目

本作は、30代前半の恋愛に迷っている男女が主人公の短編集です。
10作のうち8編目に収録されている
「デートは本屋で」が本屋にまつわるお話です。

あらすじ

破局したばかりの主人公、千晶が男に求める条件は、お金でも見た目でもなく、本を読むこと。
だから最近、ちょっと心を動かされているエンジニアの男に、
「南條さんって、本なんてけっこう読みます?」(p.196)
と品定めするような会話を吹っかけます。
すると予想以上に骨のある回答が返ってきたので、
千晶は”この人、合格だ”と思うのです。
なんかね、上からで危なっかしい感じがしないわけでも無いのですが、
初めてのデートは本屋さんに決まりました。
さ、二人のラブストーリは、上昇幕開けになるか?!

恋愛においてある程度、相手に求める条件的なものってありますよね。
ただ30代も差し掛かってきますと、理想の結婚像と現実のギャップ。
周りからなんだかんだ言われて、条件を緩めるように諭されるわけです。
でも次に付き合う人とは結婚したいと思えば、勢いだけでは恋愛に進めなくなっているのです。
そもそも社会人生活が10年経とうとしているところ、譲れないものも。
色々と固まってきて身動きが取れなくなってきている。という場合もあるわけです。
千晶がそこまで思い詰めているかどうかは分からないのですが、
千晶が求めている人が一点張りの「本を読む人」ということ。
この条件、緩いと思いますか?厳しいと思いますか?
ベルは、厳しいと思っているのです。というのも、読書人口が減っているから
という理由ではなく、本を読み進めていくと、
「本を読む人、ただし、センスがいい人に限る。」
という但し書きがつくのです。但し書きの部分がじわじわと見えてくる。
千晶は、人となりを判断するときに、本を読む人、さらに、、、と
本を媒介にして、2段階認証になってくるのです。
でもま、気持ちはわかるんですよね。
自分が好きな本を相手も好きだって言ってくれたら、嬉しいですよね。
運命も感じられますよね。
本に出てくる気に入ったシーンを題材に語る千晶は、小説好きにありがちなロマンチスト。
小説好きなロマンチストほど厄介な頑固者っていないと思うんですよね。
終始落ち着いたトーンのストーリーではあるのですが、
こんな理想を持っているからこそ、出会えたのでは無いかな。と思える、
期待感ある終わり方が良かった。

作品全体の魅力は

こちら男女の恋愛ということで、10作中7作くらい女性視点です。
石田さん、女性の描き方がうますぎる!
男性作家さんが女性を描くと、男性から見た女性が描かれることが多い気がするのですが、
しかし、石田さんはマジで違和感がない。
女性表現の上手い男性作家さん、ナンバーワンと言ってもいいくらい。
登場人物の着ているもの、季節感、細いところまで全体的におしゃれで
女性ファンが多いのも納得です。
そして何と言っても、都会的で洗礼されています。
広告制作会社、花屋、ウエディングプランナーなど様々な職業。
新宿のビルの夜景、西麻布バー、恵比寿のスーパーマケット、
こういうのが似合うんですよね。
普通の恋愛に石田さんのスパイスを効かせている感じは共感を呼ぶかなと思います。
大人の恋愛がテーマなので、大人になって読めて良かったなとも思いました。
性的描写もちょこちょこ含まれていました。
一気に読むより、ちょこちょこ開けて読むのがお薦めです。

相性の良い本は

タワマンを舞台にしたこちらがお薦め。

読書がもっと好きになる小説おすすめ3選を紹介します!【Chapters書店コラボ】
元サイトで動画を視聴: YouTube.

関連する記事