【全3冊】今一番アツいミステリーを語ります!本屋大賞2022候補作レビュー!

【文学YouTuberベル】書評を中心に、読書の魅力を配信中の文化系YouTuber。今回は、2022年本屋大賞候補紹介の第二弾!ミステリー小説の紹介です。

 

1冊目!

第166回直木賞受賞。
史上初、4大ミステリーランキング完全制覇の完全ミステリーです。
あらすじは、
本能寺の変より四年前、天正六年の冬。
織田信長に謀反を起こし籠城する荒木村重が、
霊閉中の天才軍師・黒田官兵衛の知恵を借りながら、
戦乱中に起こる奇妙な事件の真相を追っていくという物語です。

荒木村重は、有岡城の城址。
その有岡城の土牢にいる、黒田官兵衛。
これからの文字を取ってタイトルの「黒牢城」です。

こちらの作品のジャンルは、安楽椅子探偵という言われるもの。
事件現場に行くことなく人からの話を聞いて事件を解決するタイプのミステリー。
今回の作品は、割と古典的なジャンルの作品ですが、
安楽椅子探偵の中でもイレギュラーな感じの作品だと思います。
なぜかと言いますと。
普通は、事件を解決して欲しい人と実際に事件を解決する人というのは、
協力関係でないと成り立たないですよね。
安楽椅子探偵として有名な「謎解きはディナーのあとで」でも
富豪の刑事に支える執事が助言する立場です。
なのに、荒木村重と黒田官兵衛は、敵同士。
村重は、信長に謀反を起こしていますが、官兵衛は、信長側。
官兵衛が、今なら間に合うから、信長側に戻ろう!と
説得をしに行ったところ、幽閉されてしまったという状態。
しかも官兵衛をその場で殺さず、生かして土牢へ入れて置くというのは、
当時のしきたりからしたら、無礼極まりない方法らしい。
官兵衛は恨みがあるのに、なんで村重に協力するのか。
そして、村重はなぜ官兵衛を殺さないのか。
これが各事件の謎解きを包み込む、最大の謎になっておりまして、
4章で全て明らかになるという構成です。

具体的には、
第1章、雪夜灯篭では、人質の密室殺人事件を。
第2章、花影手柄では、大将首を討ち取った人物の特定騒ぎを。
第3章、遠雷念仏では、未死の殺人事件を。
第4章、落日孤影では、全編漂う怪しさの正体、そして、
黒田官兵衛の真の企みが明らかになります。
これを官兵衛が捉えられる瞬間を描く序章と、
有岡城落城後を描く受章で挟んでいます。
大雑把な感想は、「傑作」ですね。
他のミステリーと比べても圧倒的だと思いました。

ミステリーは、特に5W1Hが大事ですよね。
どのように犯行に及んだのか、トリック重視の
ハウダニット、How done it?
誰が犯人なのか、犯人重視の
フーダニット、Who done it?
そして動原重視の
ホワイダニット、Why done it?
という言い方もするくらいです。
これに加えて、黒牢城は、
Whenの戦国、Whereの城、ということも含めて、
どこをとっても完璧で斬新!

本作は、ミステリーとしてもさることながら、
歴史小説としての新たな、荒木村重像を提示することに成功しています。
荒木村重ってどんなイメージですか?
正直、あまりいいイメージはないと思います。
謎行動が多い。
織田信長にめちゃめちゃ可愛がられているにも関わらず、
なぜか謀反に及び、その後、10ヶ月ほど篭城したと思ったら、
一人だけ逃げ切り、一族は本当に悲惨な最後を迎えています。

そんな村重ですが、本作では、
信長への謀反、官兵衛をはじめとした敵を殺さない主義、
そして自分だけ脱出した意図、全てに意味が与えられて、
ある意味スッキリします。
学問としてどうなのかは、わかりませんが、
解釈の余地があるところに、新しい荒木村重像を描いています。

本作のテーマは、
「命をかけてまでも守りたいものは何か」
なのではないでしょうか。
今なら、命より守りたいものがあるのだろうか?となりますが、
戦国時代当時は、命を守りたい、城を守りたい、家族を守りたい、城址を守りたい、
プライドを守りたい、義理を守りたい、そして、信仰を守りたい。
命を守る多様性があるというか、死ななければ実現しない世の中とは言えますが、
守るものがある人の強さを感じることができました。

でも時代小説って読みにくいんでしょ??って問題ですよね。
読むのにめちゃくちゃ、時間かかりました!
日本史を知らなくても楽しめるのですが、
時代小説用語、聞きなれない言葉、風俗を想像できない場合、
難しく感じることは否めないと思います。
しかし、1章につき、一次元。その中にも起承転結があり、
物語がはっきりしているので短編的に読んで、区切りをつけやすいです。
登場人物も進めばある程度固まってきますので、
絶対4章まで読んでください!
4章で全てをまとめ上げますから。そして、きっと感動するはずです。

相性の良い本は、
ミステリーではありませんが、
杉山大二郎さんの「嵐を呼ぶ男」。
今、「信長の血涙」と改題されて、文庫化もされています。
こちらは、新しい、熱い、信長像を覗くことができます。

2冊目!

あらすじは、
ノリに乗っているIT企業「スピラリンクス」の初めて行う新卒採用最終選考は、
残った六人のグループディスカッションで1人の内定者を決めるというとんでもないものだった。
会場では個人名が書かれた6通の封筒が発見され、
開けてみると「●●は人殺し」だという告発文が入っている。
告発は事実なのか…?このまま全員分の闇が暴かれてしまうのか…?
内定者は誰なのか…?そして犯人は誰なのか…?
2011年の就活が舞台となった議論系のミステリーです。
この設定が秀悦です。
作者は、1989年生まれ。まさにこの時代に就活をしていた世代です。

舞台設定となっているスピラリンクスは、立ち位置的にGoogleだと思ってください。
初任給は、50万円でございます。
誰もがみんな、この企業に入りたくて仕方がない。
今なら、そこまでこだわる?と思うかもしれませんが、
この時はまだ大企業信仰も残っている時。
例えば、企業でサラリーマン向いていないから起業しよう!なんていう人も
レアな時。就活が人生を決める最後のチャンスだ、という節もなくもなかった。

作者が本当に就活を経験しているかは分かりませんが、
全体を通して、就活で人の本質を見極めようとする無意味さ。
そんな怒りというものが伝わってきました。
ので、個人的には思うところがあったのではないかと思います。
作者の就活への思いが伝わる内容でした。
少なくともその時代の雰囲気は知っていて、その熱意を持って
就活の気持ち悪さを前面に押し出しています。
この就活における全員、敵!な中で攻略していく特殊な環境ってミステリーにピッタリ!
しかも人事は、内定を取りたい人たちに対して、ひとり内定者を決めてくださいって
ライアーゲーム運営張りに揉めさせる気、満々!!
まぁー、いやらしいけど、興味そそる!
とにかく物語にぐいぐい引き込んでいくそのパワーがすごい!
これは一つに、構成にも秘密があると思います。

就職試験編、それから編に分かれています。
就職試験編の方は、最終試験に至るまでの経緯やみんなのやりとり、
そして本番の試験の様子が描かれています。
まぁ、ハラハラです。
議論でひとり内定者を決めればいいのですが、その方法っていうのを自分たちで
決めていくんですよね。彼らは話し合った結果、30分毎に一人一票でふさわしいと思う人を
投票して行き、合計の得票数が高い人を内定者として決めようとなりました。
しかし、封筒の存在がかき乱していくんですよね。
これがまた厄介で、Aさんと書かれている封筒をAさんが開けると、
Bさんの暴露が入っている。つまり自分で自分の秘密をコントロール出来ない。
だから封筒を開かれちゃった人は、今まで得票数が順調だったのに、
いきなりイメージ下がって、落ちるなんてことがあるんですよ。
そうすると封筒を開かれちゃった側からしたらフェアじゃないから
全員、封筒開けよ!となる。でも封筒を開かれてない人からしたら、
絶対に封筒を開けないで、絶対開けないで。内定、かかってるんだから。
と、必死。さらに本来、人気投票だったら勝ち目なかったな、なんてヤツが
ワンチャン?!なんてこともあって、欲望が乱れまくっている。
そんな中で告発文の後なんかに、インタビューパートが挟まれているんですよ。
10年後とかかな。
それから彼らたちはどうなったのか、というのが垣間見れる。
これがまた怪しいのなんのって。
だいたい、そのインタビューも誰がしているの?なんて色々と
想像が巡ります。
そしてまた、試験本番モードに戻されるのです。
結果が気になって、次から次へとページをめくる手が止まらない。
でもこれで終わりじゃないんですね!それから編が待っています。

それから編…地獄の試験が終わったのに、それから編は、本の半分もあるんですよ!
ミステリーをあまり読まない人なら、前半の半分で十分満足できる出来なのです。
でも、10年の時を経てあの事件の全貌。
6人の本当の姿が明るみに出ます。
トリックを見破るまでは行かなかったのですが、種明かしを知った時に
流石にそれは気づいたんじゃない?という所は一部、ありましたね。
結末は、作者のメッセージを感じました。
人間は、こうあるべきだよねっという願いを込めることを大事にしていたかな、と思います。
それによってドロドロした、クズばっかりな話なのに、嫌ミスにはならなかったと思います。
読後考えたのは、人が人をジャッジする難しさ。
就活関係なくても他人を決めつけて安心したい部分があると思います。
よく分からないという状態が一番嫌だからなんとなく、なんとなく決めちゃたほうが、
考えてなくていいから楽なんですよね。
この本を読んでいるとこの子たちみんな良さそうで青春しているじゃん。
と思いきや、全員クズ?!と思ったり、そうじゃないのか?と思ったり。
翻弄されていきます。その経験を持ってあぁ、人間なのか。
人の本質を見極めようとすること自体がおこがましいことだな。
と思うわけです。
きっと作者は、人を人がジャッジするというものを暴走させたものとして、
就活を一つ捉えて、止まって、それって本当に意味ないからってことを
伝えたかったのかなぁと思います。

おすすめの人と区切らなくても大衆性のある作品だと思いますが、
今、就活をしている人だけは、疑心暗鬼になるのでお勧めしません。
就活が落ち着いてから読んでください。
相性の良い作品は、
朝井リョウさんの「何者」。
これは就活が舞台になっていて、しかも時代も一緒。
かつミステリー風味でもあります。
また議論で進めていくミステリーが好きな人は、
冲方 丁さんの「12人の死にたい子どもたち」もお勧めです。
嫌ミスじゃないところも共通しています。

3冊目!

12万部突破。著者初の本格ミステリー。
見取り図、登場人物一覧、本格!来たねーーー!の100%の演出です。
さらにミステリーの大御所たちが名を連ねる、本の帯のコメント。
単行本には珍しく、「刊行に寄せて」と島田荘司さんが書いていて。
とても期待値を上げてきます。
どんなあらすじなのか、今回の3冊の中でも特にネタバレ注意?!

雪深き森で、燦然と輝く、硝子の塔。
地上11階、地下1階、唯一無二の美しく巨大な尖塔だ。
ミステリを愛する大富豪の呼びかけで、
刑事、霊能力者、小説家、料理人など、
一癖も二癖もあるゲストたちが招かれた。
この館で次々と惨劇が起こる。
館の主人が毒殺され、ダイニングでは火事が起き血塗れの遺体が。
さらに、血文字で記された十三年前の事件……。
謎を追うのは名探偵・碧月夜と医師・一条遊馬。
散りばめられた伏線、読者への挑戦状、
圧倒的リーダビリティ、そして、驚愕のラスト。
著者初の本格ミステリ長編、大本命!

ミステリーの中でもさまざまなジャンルがありますが、
こちらはなかなか決めきれない。なぜなら、ミステリーの全のっけ丼的な感じ。
初めから犯人がわかっている状態で、始まります。
探偵もの、クローズドサークル、密室殺人、読者への挑戦状、ダイイングメッセージ、ほんのりメタ、
そして、著者ならではの、どんでん返し。
全て詰め込まれていて、500ページ以上にも渡る全てに
ミステリー愛が盛り込まれている内容でした。
強いて一言で表すなら、名作オマージュミステリー。
特に国内外関わらず、有名な過去のミステリー、そして現役を含む推理作家の話しが、
たくさん出てきまして、トリックに大いに関与してきます。
中でも、綾辻行人さんへの憧れがすごかったですね。

では、ミステリーフリークではない人たちは、どう感じるのか。
多くのミステリーのうんちくが多々用いられるので、ミステリーが分からない人には、
ちょっとくどく聞こえる部分もありますが、
新本格ミステリーのガイド的な役割も果たしている部分もあると思われます。
作中でベタ褒めされている作品においては、読書欲が増しました。
ただ、他の作品のネタバレを気にする方は、要注意かもしれません。
登場人物は、10人出てきますが、それぞれの服装や特徴がバラバラで
こんがらがることがありません。キャラの書き分けがとても上手です。
また見取り図のお陰で、容易に場面設定が正確に出来ました。
圧倒的なリーダビリティは、著者の圧倒的な強みでもあり、ポリシーでもあると思います。

この物語は、ガラスの塔に滞在して、1日目、2日目、3日目、最終日、
と、日によって章が分かれています。なので、一件落着、これで終わっちゃうのかな、
と思うとあっと驚く展開が待ち受けています。突拍子もないような内容が含まれていながらも、
伏線的にはフェアな内容も含まれていましたし、途中までの微妙な違和感の正体も
判明したので、納得はしました。
2回、読者への挑戦状を叩きつけられていますから、私は、受け取りまして、
2連敗しました。綿密に練っていますし、言葉遊び的な仕掛けも面白かったです。
ミステリー的にもエンタメ的にも楽しめる作品だと思います。

相性の良い作品は、萌え系女子が探偵となって男性とバディを組むところ、
そして予想外の結末が待っているというところが、
相沢沙呼さんの「メディウム」がいいんじゃないかな、と。
また作中に出てくる、
アガサクリスティの「そして誰もいなくなった」、
綾辻行人さんの「十各館の殺人」、
島田荘司さんの「占星術殺人事件」
この辺りは、読んでいたらもっと楽しめたのかな。と思いました。

【全3冊】今一番アツいミステリーを語ります!本屋大賞2022候補作レビュー!
元サイトで動画を視聴: YouTube.

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